水を含んだ空気が重くのしかかる 触れた手からあふれ水滴となって落ちる
ぬかるんだ泥に足を取られ 西へと向かう道をただまっすぐに
音もなく流れる河が分かつ彼岸と此岸 全てを飲み込んだ水は重く緩く進む
どこから来てどこへ向かうのか 記憶の片隅に刻まれたままに ただ先へと
立ち上る水蒸気は雲となり やがて雨となり再び河の流れとなり 永遠の連鎖となる
西の空は沈みゆく太陽に染まる 長く伸びた影は現実か虚構か
何の為か理由は失われたまま 西へと向かう道をただ先へと
限りある命は束の間の夢と同じ 父よ母よ その父よ母よと辿る命は
今を媒介に子へ孫へ その先へと繋がり 遥かなる過去と未来を結ぶ
風に揺れる稲穂の黄緑が連なる 堆積した記憶が作る肥沃な大地のもと
現実と幻想が交差する世界は 細胞の隙間に刻まれたままに 無限に続く
水牛が引く荷車に乗せられた子供の顔は誰とも知れず 歪んだ時を通り過ぎていく
茜の空へと舞い上がる龍神の 鈍く光る鱗の青
跳ね上がる尾から飛び散る水滴が 恵みの雨となり 再び大地に降り注ぎ
繰り返す営みは答えも終着点もなく ただ前へ前へと
父と母とその父と母との 雨よ降れ 命よ巡れと永遠に続く祈りが
龍神の化身となって空に舞う
西の空を染める夕陽は紅に薄桃に紫、藍へと色を変え
永遠の西日の中を連なる命とともに
子へ孫へその先へと ただ前へ前へと
水を含んだ空気に視界が揺らぐ 染み出す水滴に世界は歪んで形を変える
ぬかるんだ泥に踝埋めて 西へと向かう道をただ前へと
茜の空へと舞う龍神の 跳ね上がる尾の先を追って
In the image of "りゅうじんさま(石川巧馬)"
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